AMG C43

このインプレッションは確か2000年前後の頃、最初にホームページを作った時のものです。もはや内容的にはいかがなものか、というところですが、なかなか興味深いのでアーカイブとして残しておきます。

今回、熱心なお客さんに頼まれ、苦労して見つけ出した一台が、この「98年式 AMG C43」だ。同じくCクラスのAMGモデル、C36の後継車でありマイナーチェンジ版として1997年に発表された。マイナーチェンジといってもそこはAMG。パワーユニットはC36の直6、3.6リッターから、当時EやSクラスに搭載されたV8ユニットを4.3リッターにスープアップしたスペシャル版となっている。

最高出力 306ps/5850rpm、最大トルク 41.8kgm/3250~5000rpmという、トルクの塊のようなトンでもない高性能エンジンを持つ。最高速こそリミッターにより250km/hまでとなるが、0-100km/hはカタログ値で6.5秒とスポーツカー並の速さを誇る。新車価格にして当時990万円のスーパーメルセデスだ。

パっと見には普通のメルセデスに見えるかもしれない。しかしよく見ると、その低く構えたスタイルやCクラスの開発と同時に進めてきたという、抜群のフィット感・連続感を持つエアロにより、明らかにノーマルのメルセデスCクラスとは違うオーラを放っていることがわかる。そして、走らせてみると、その違いはより鮮明になり、あきらかにステージの違う走りに愕然としてしまう。

初期のAMG車は、メルセデスの完成車に対して、エンジンの乗せ換えやパーツ交換などを施してコンプリートカーを作ってきた。しかしC36以降、もちろんこのC43もエンジン、足回りの組み込まれていない半完成状態のCクラスをAMG社に運び込み、そこではじめて熟練職人の手になるエンジンやサスの組みつけを行なうという、まさに一台づつ手作りのオーダーメイドカーとも言えるものとなっている。

黒いインパネやブラックウッド材、黒の本革シートといった黒一色のインテリアの中で、ぽつんと異次元への扉のように輝くホワイトメーター。この精悍なイメージの演出により、シートに座った瞬間にこのクルマが、ただならぬクルマだと予感させてくれる。シートはサポートのしっかりしたマルチコントロールが可能なバケットタイプ。灰皿カバーには本物の証しであるAMGのロゴとシグネチャーが入っている。

さっそく、納車前のチェックも兼ねて走らせてみた。このクルマの走行距離はまだ1万Km。慣らしが終わって、さあこれからという新車同様の一台だ。とにかく街中では乗りやすい。普通に走っている限りにおいては、電子制御5速ATの適切なギア比により、このクルマがとんでもない実力を秘めていることを、つい忘れてしまいそうになる。ただ、どこから踏んでも力強く盛り上がるトルクが、AMGに乗っているのだという事を思い出させてくれる。乗り心地は低速ではやや硬めの印象だが、ゴツゴツした感じではなく、引き締まった剛性感を感じる。そしてスピードが乗るごとに安定を増していくというメルセデスらしさはより顕著だ。

高速に乗ってみた。
こちらは普通にアクセルを踏んでいるだけなのだが、前のクルマがどんどん近づいてくる。ふとメーターを見ると、信じられないような数値を指し示しているにも関わらず、リラックスして運転している自分がいる。まったく安心で快適だ!
そしてブレーキが圧巻だ。まさに「踏んだだけの制動がかかる」というカンジで、効くなんてもんじゃない! 思わず後ろのクルマが突っ込んできはしないかとミラーを見てしまった。

アクセルを踏めば、それこそ何キロで走ってようが、どこからでも強力なトルクでぐいぐい加速していく。その加速感も激速という類のものではなく、あくまでメルセデスらしく、力むことなく重厚に。エンジン音は特に咆哮えたてるようなことはしない。部品のひとつひとつがきちんと動いていることを、ドライバーの邪魔にならないように、ただし的確に伝えてくれる。

曲がりたいときに曲がれ、止まりたいときに止まれ、
走りたいときには、どこまでも走れる。
ホントにこういう素晴らしいクルマに乗ると幸せな気持ちになる。
先代のCクラスが好きな人にとっては、たまらないモデルだと思う。
ぜひ機会を見つけて乗ってみることをお勧めする。
そして、どうしてもC43しかない! と思った人はボクに連絡してほしい!